2003

11月 17日

『マトリックス』の研究を始め出してから色々資料を漁っていた。『マトリックス』には引用またはイメージを借用 している作品が数多くある。その大体には目を通しているのだが、資料の膨大さとバカな哲学者に辟易する 毎日。2chにまで目を通していた私もバカだ。

ウォシャウスキー兄弟が『マトリックス』を製作するに当たってキアヌに読破を命じた本が2冊あるのだが、その 一冊が1作目にも登場したボードリヤールの『シミュラークルとシミュレーション』。そしてもう一冊がケヴィン・ ケリーの『複雑系を越えて』である。
ケヴィン・ケリーの『複雑系を越えて』はかなり面白い。編集業に携わる人物だけあって文章は読みやすい。
が、文章量が膨大である。サブタイトルが「システムを永久進化させる9つの法則」となっているのだが、 ウォシャウスキー兄弟が『マトリックス』製作にあたってこの9つの法則を考慮していたことは、まず間違いない だろう。その9つの法則を挙げておこう。
 「存在を分散せよ」 「ボトムアップ方式でコントロールせよ」 「収穫が増加するよう耕せ」 
 「塊にして成長させよ。」 「周縁を極大化せよ。」 「自らの誤りを尊重せよ。」 
 「最適条件を追求するな――多数のゴールを設定せよ。」 「持続的な非平衡状態を追及せよ。」 
 「変化は自ら変化する。」
以上だ。
ボードリヤールはウォシャウスキー兄弟が自分の考えを曲解していると述べ、それゆえか『マトリックス』の続 編製作にあたって協力を要請されたのも断っているのだが、ボードリヤールの見ているものとケヴィン・ケリー の見ているものには重なる部分がわりとあるように思う。そして当然マトリックスもそうそう彼の主張と食い違 うものでもないように思うが、どうだろう。ボードリヤール曰く、「新たらしいゲームの始まり、ルールは不確実 性」ということだ。
ボードリヤールの『シミュラークルとシミュレーション』にはまだ手をつけていないのだが、実のところ私はボー ドリヤールがあまり好きじゃない。ニヒリズムという点において親和性が高いはずであるのだが、少々感情的 な論法が気に食わない。詩的な文章も意味がふらつきがちで引用に耐えるものがあまりない。 「科学技術の祭壇上で象徴的なあらゆる帰属関係の拒否や喪失の罪滅ぼしをすること」って何だ?
私はこういう自分語で語る哲学者たちが大ッ嫌いなのだ。彼らは結局、実体が見えていないから変な自分語 を作って語る。それの解読に時間を割くのは勿体ない。が、まあ頑張ってもう少し読んでみよう。

他のマトリックス関連資料についても書くに値することはいくつかあるのだが、 とりあえず『レボリューションズ』のパンフによると2作目『リローデッド』にはジョナサン・スウィフト著『ガリヴァー 旅行記』からの引用があるとのこと。ちょうど手元に未読のまま放置された同書があったので読み始めたのだ が、コレがとてつもなく面白い。臨場感溢れるファンタジーであり、また随所に散りばめられた知的な皮肉が 甚だ愉快。



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