雑記
【 無矛盾な混沌と世界の物理 】




人間の言動は矛盾だらけであり、僕は常々それを指摘しているのだが人はあまり矛盾を気にし てくれない。現行のCPUは矛盾に直面した時点で立ち往生してしまうというのにね。
現行のCPUはひとつの方程式のもとに全ての問題を最後まで片付けようとするからそうなってし まうので、その点が人間の脳とは少々異なっているのだけれども、それは別に人間が物理法則 に対していい加減である事を意味してはいない。人間の脳は矛盾問題に対してうまい具合にで きているだけだ。人はおおむね矛盾を無視するようになっている。答えが出ない問題は「ゼロ」と して、無かった事として扱われるのが世の常でありそれがタブーの正体というわけだ。「処理がタ イムアウトになりました」というわけだ。それも悉無律のなせる業であり、生存に無用な情報は切 り捨てられるというわけだ。世界の仕組みに思いを馳せなくたって、自省能力が欠如していたっ て、唯生きるだけならとても簡単なことだから。
一般的な社会人になるほどその反応が顕著で、子供は「物事はそういうものだ」と割り切って考 えることをまだ知らないから、わりと矛盾に敏感なのだけれど、残念なことに子供らの多くは矛盾 を指摘する言葉を持っていない。だから時にダブルバインドに陥って彼らの人格形成に多大な影 響を与えることになる。大人はわかってくれないし子供は語ってくれないわけだ。矛盾に敏感な 子供ほど異端の道を歩むのだろうが、多分それもまた世の常だ。 
まあいいさ。

それで唐突だけど、
この世界の物理法則を捻じ曲げることは可能だと思う? 
物理法則自体を矛盾させることが可能だと思う?

規模のでかい話をすれば、タイムマシンなんかは判りやすい例だ。これさえ有ればあらゆる物理 法則をねじ曲げられる。そのくせ驚くべきことに理論上は作ることが可能だというのが現代物理 の見解らしい。ただ、タイムマシンが歴史に干渉した時点で世界に何が起こるのか、それは誰に もわからない。たしか何かの物語では、もうひとりの自分と出遭った時点で「世界が崩壊する」と いう設定があったと憶えているけれど、まあそれはないだろう。
タイムマシン成立後の世界においても物理法則がそのまま適用されると考えるなら、物理上の 矛盾を許容できるのは並行世界(パラレルワールド)が存在しうるという並行宇宙論だけだと思う。
だが、この理論自体がそもそも矛盾を孕んでいるから如何なものかとも思う。それは、もし並行宇 宙が存在してそれが間接的にでも存在が確認できるのであれば、それはつまり干渉可能な世界 だということであり、ならばそれは並行世界ではなくて同時系列の世界ということだから。
まあとにかく物理法則が捻じ曲がれば、何が起こるかは分からないのは確かなことだ。世界が 矛盾に直面したときにCPUのように凍りつくなんてこともあまり有りそうにない。

それでタイムマシンの話は終わり。現時点でこれ以上に語ることはあまりない。あと物理法則を ねじ曲げられるものがあるとすれば・・・「ラプラスの悪魔」と「マックスウェルの悪魔」だな。
けど、面倒臭いから説明はしない。
現代ではまだ、この問題を本気で語ってみても多分、ハードSFとしてしか受け止められないだろ うから、僕も本気で論じるつもりは無い。まあ知的なお遊びだ。これを読んだ方でヒマな御仁であ ればこの問題を考えてみるのも面白いだろう。ただし、その内この問題が紐解かれることの必要 性が本気で叫ばれるようになる可能性はある。この世界の物理法則がどれほどに強固なもの か、それがわかる頃にはね。 
まあいいさ。
この話はひとまずこれで終わり。


それからどうでもいい事なんだが、ちょっと面白いシナリオを思いついたので考えてみて欲しい。
それはもしタイムマシンが本当に成立可能だとしたらの話なのだが ――

タイムマシンが製造されるからには、やはり作業中にも別次元に干渉する力 が生じてしまうはずで、だとすれば、それによって過去や未来が変わる可能性 が生じるはず。それはつまり、一見してタイムマシンは完成していないのにタイ ムマシンがすでに機能し、研究者たちの作業工程に影響を与えてしまうという こと。
ならば可能性は低いだろうが、とても愉快なシナリオがひとつ出来上がる。
それは、永久にタイムマシンが完成せず研究者達が無限ループに飲み込まれ てしまう可能性。研究者達は製造に取り組み、ああでもない、こうでもない、 理論上は正しいのに!なぜなんだ!とか言いながら日夜奮闘し続ける。
けれども未完成のタイムマシンの力によって微弱ながら少しずつ物理法則は 捻じ曲げられてゆき、そして世界は誰にも気付かれること無くゆるやかに混沌 と化してゆく。研究者たちは自分の周りで変なことが起きるけれども無頓着 で、今日もまた悪戦苦闘の日々を繰り返す。

まあそんなシナリオだ。
ただね、混沌というのは人間にとっておそらく残酷な無法世界を意味するのではないはずだよ。
たぶん逆。そこにあるのは希望だろう。一歩を踏み出すごとに世界が摩訶不思議なものへと 変わってゆく。それは人間にとって愉快な世界じゃあないかい? 
まあそれは、そこに人間が成立できたとした上での話だが。

物理法則が捻じ曲がるというのは、多分そんな感じなのだろう。
そしてもしそれが本当に可能であるのなら、一度やってみるのも面白いのではなかろうか。

たぶん誰も困りはしないよ。

03.12.29