メタフィリア ラボラトリー
occultism

数秘学 (3) 神の名は・・・


 映画πの中で ユダヤの神秘主義者たちは、隠された神の名を知るすべが主人公の見つ けた216桁の数字にあると考え、主人公を執拗に追い詰めてゆく。
この設定にあまり深みは無いのだけれど、ヘブライ語は文字のひとつひとつが数字に対応して いるので、一応の整合性はある。 けれど根本的なところを考えてみよう。
 ユダヤ教というの一神教で、その神の名は「YHVH」と記述される テトラグラマトン(神聖四文字)に秘められているらしいのだが、 神の名はみだりに口にしてはならないという教えのせいで、いまでは誰もその正式な発音を知りはしない。
そこでひとつの疑問を投げかける。名前と言うのは個体識別のためのもの。
たった一人しかいない神になぜ名前が必要なのか

まあいい。それ以上は突っ込まない。 して、彼らのかかげる神とは一体いかなるモノなのか。
ユダヤ教の聖典、すなわち旧約聖書であるが、偶像崇拝を禁じられた彼らが禁を犯してまで 崇めている聖書、そこには様々な歴史が記述されている。それはギリシャ神話と同様に周辺 諸国の様々な神話をつぎはぎしたものだ。ギルガメシュ叙事詩やゾロアスター教の神話からの 引用が目立ち、教義にもそれらからの影響が現れている。
 (蛇足だが、ニーチェが「神は死んだ」と述べた著作『ツァラトストラはかく語りき』のツァラトストラとは、ゾロアスターのことである。)
ユダヤ教もまた数多の思想を混在させて誕生した、宗教文化の枝葉の1つに過ぎない。
では、その枝葉を支える根幹となる思想は一体どこにあるのだろうか。



ユダヤ教に影響を与えたゾロアスター教、これは古代イランに興ったのだが、彼らの聖典 「アベスター」にはインドで興ったバラモン教の聖典「ヴェーダ」との言語的類似が見られ、他にもイ ランとインドの間には文化的な類似が見られる。そして両者の接点となるのが「アーリア人」 だ。彼らは前2000年頃に中央アジアから移動し、イラン方面とインド方面の二手に分かれた 同じ語族である。
ヒトラーが掲げたアーリア人種とはこれのこと。アーリアとは「高貴」を意味する。)
この辺の語族関係から、先の章の108思想の起源が見つかるかもと思ったのだが、関連した 記載は見つからなかった。だが、前20C以前にまでさかのぼるアーリア人の思想に由来する 可能性はあるだろう。


そしてこの章の本題に移ろう。神の名についてである。
先に述べたような語族関係が重要なのは、言語の類似性がすなわち文化交流を示唆するか らである。だが世界にはユングの考えた元型(アーキタイプ)のように、共通して現れる文化 特性のようなものが稀に存在する。宗教という人間の心理と密接な部分ではそれが顕著に表 れることがある。

バラモン教には「ブラフマン」「アートマン」という二人の聖霊が登場し、この二つはほぼ同一 体であるとされる。
ゾロアスター教は「アフラ=マズダ」という善神と「アーリマン」という悪神を崇める。
エジプトの太陽神の名は「ラー(アメン=ラー)」。一時、「アトン」なる唯一神も登場した。
イスラム教の唯一神は「アッラー」
そして、高貴を意味する「アーリア」

くどいほど並べたので、おわかり頂けたであろう。
敢えてもう1つ提示すると、日本には「天照大神」。これもおそらく同じ理由でこうなったのだ。
なぜこうした事が起こるのか、ひとつ考えられる事がある。
日本語の50音表というのがあるが、あの配列には理由がある。右上の「あ」に始まり、母音の 終わり「お」までと、子音の終わり「わ」までを発声してみれば解かるが、発声の位置(そう呼ぶ のかは不明)が少しずつ前に移動するのだ。
特別に意識もせず、力まずに出される音。それが「」。 神の名がアで始まる理由はそれだろう。始まりを意味する言葉を冠した。だがおそらくそれは 作為的なものではなく、口をついて出た言葉から自然にそうなっっていったのであろう。

「私はアルファであり、アレフである。」



結局、YHVHの読み方はわからずじまいだったけど、
この際そんな事はどうでもいいじゃないか。
納得しないのはユダヤの神秘主義者ぐらいなのだから。





’02.3
改稿 ’03.6.27
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